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  • 執筆者の写真梅田夏希

MMTについて

こんにちは、梅田夏希です。


今回は、最近話題のMMTについて私見を語ろうと思います。MMT(現代貨幣理論、Modern Money/Monetary Theory)とは、「お金とはこういうものだよ!」という一般論を今までの通説とは少しだけ違う角度から語った新理論のことです。その中の一節で国債についての見解を述べており、この部分が賛否両論を巻き起こしているようです。

(↑画像引用元:Pixabay、作者:angelo luca iannaccone


語弊を恐れずざっっくり言ってしまうと、MMTは「アメリカと日本は、国債を今よりもっと多く発行しても大丈夫だよ!」と言っており、これに対して私は、まあ正しいかなと思っています。



ただし、国債はいくらでも発行していい打ち出の小槌ではありません。金の成る木でもありません。MMTをよく分かっていない批判論者の中にはここを誤解して「国債を無制限に発行してもいいなんて、MMT論者はけしからん!!!」なんて言う人がいるわけですが、MMT論者はそんなことは言っていません。ここを誤解している限りまっとうな反論はできず、MMTを全否定してしまうことになるのですね。



国債の発行限度額は?

 

日本の国家歳出は年間100兆円ぐらいです。(一般会計のみ。国債費23兆円を含みます。)ここで、例えば年間1兆円ぐらいの国債を追加発行したところで直ちに破綻することはなさそうです。しかし、年間8000兆円ぐらいの国債発行を続けたら、数年ももたずに何かとんでもないことが起きそうですよね。つまるところ、年間1兆円と年間8000兆円の間のどこかにリミットがあるのです。それはいくらなのか?を現実的に考察し、発行していい国債の限度額の見積り方法を提案している理論の一つがMMTということですね。MMTに反論したいのなら、MMTに対する異論(別の見積り方法)を示すことができれば説得力が増すのですが、私が見かける批判論者の多くは「借金は少ない方がいい!いいに決まっているんだ!」との旨を述べるのみで、いくらまで増やすとどう危険になるのかを具体的に語りません。



何を以って「破綻」とするのか

 

通常、私たち個人が借金で破綻するのはどのようなときでしょうか?それは現金預金が尽きたのに、借金の返済期限が来てしまったときですね。20万円しか持っていないのに、明日300万円返済しないといけない…。ちょうどこういう状況です。個人だけでなく、会社でも、地方自治体でもこれは一緒です。


しかし、日本国は違います。日本銀行がOKを出す限りいくらでも紙幣を刷ることができますから、基本的に現金が枯渇することはありません。そこで別の「破綻」の定義が必要になり、MMTはそれをハイパーインフレと置いているようです。つまり、ハイパーインフレが起こらない限りでなら、国債をたくさん発行しても大丈夫だよと主張しているのです。


個人がする借金はいつか返済することを前提として行いますが、その全ての借金について返済期限を確実に守れる算段があるのなら、返済を急ぐ必要はありません。

一方で国の借金は永遠に借り換えを続けて、減らさずに持ち続けていてもいいとMMTは説きます。ハイパーインフレなどの具体的な危機を確実に避けられる算段があるのなら、返済を急ぐ必要はないということですね。



で、国債は何兆円まで発行できるの?!

 

MMTは、現在の日本のインフレ率、金利、失業率などを鑑みて「今よりはもっと多く国債を発行しても問題ないよ!」と言っているようです。戦争など他の危機によってインフレが誘発されることはあるかもしれませんが、少なくとも国債の発行しすぎを主要因としたインフレは、現行ペースの発行高ならほぼ起こりえないと言えるからです。じゃあ具体的に何兆円までなら安全なのかが知りたいですが、これは残念ながら分からないんですよね。。おいっ!と思いますが、経済学ってどれもこれも、こんなもんです。

結局、少しずつ増やして様子を見るしかないんじゃないでしょうか。なんだか夢のような理論に思えたけど、実は大したことは言っていないんだなー…というのが正直な感想です。



そもそも金融政策の役割とは

 

頭のいい人に金融政策の話をさせると、買いオペ、金利、インフレ率、マネタリーベース、マネーストック、ビルトインスタビライザーなどなど…、何やらムズカシイ単語を並べてきますよね。詳しくない人は、こんな単語を出されると真面目に一つ一つ調べて覚えて余計に分からなくなってしまうものです。


しかし、国家の金融政策に期待された使命はとってもシンプルです。その最終目的は「国民にとって必要な財・サービスを国民に効率よく作ってもらう(ための仕組みを作る)こと」に終始します。(それは単純化しすぎだろう!!という異論は認めます。)

国家はその目的を果たすために、創造すなわち「適正な人材に適正な事業を起こしてもらい、継続してもらう(ための仕組みを作る)こと」と、破壊すなわち「無駄な仕事をしている企業があったら、それを潰す(ための仕組みを作る)こと」を同時並行で行っています。

金利を上げ下げしたり、為替や株価を操作したり、市場競争を促進したり阻害したり、規制を作ったり緩和したり、銀行を助けたり、果ては公共事業を行ったりするのも、直球か回り道かの違いはあれど、ほとんどは上記目的を果たす(≒実体経済を活性化させる)ためなんですねー。方法は色々あって複雑なのですが、基本はこれだけです。


国家の金融政策の目的は、事業の創造と破壊を通じて「国民にとって必要な財・サービスを国民に効率よく作ってもらう(ための仕組みを作る)こと」です。



どちらにせよ有効な使い方をするしかない

 

仮にMMTの絶対的正しさが証明され、国債を年間400兆円までなら10年間発行し続けても何も副作用はないと分かったとましょう。


さてどうしましょうか。


貨幣だけが増えたところで、この時点ではまだ財もサービスも労働力も増えていません。ここで政府が特定の業界に忖度し、その業界だけしか得をしないような無駄な公共事業をたくさん設定してしまったらどうでしょうか?これで適切な生産と消費が促進されるでしょうか?多分ダメですよね。


結局は基本に立ち返り、「国民にとって必要な財・サービスを国民に効率よく作ってもらう(ための仕組みを作る)こと」を目指して、無駄は無駄としてしっかり省きつつ、効果検証を重ねて有効な使い方を模索していくしかないのでしょう。逆に言うと、特定の業界を優遇しがちな政権がMMTに基づいた国債発行を行うと相当に危険ということになります。それが何党とは、あえて列挙しないでおきますが…。笑




さて、これ以上は話が多方面に拡散しそうなので、今日はここで止めます。

MMTに対する私見をまとめると、

・国債の大量発行には反対。少しずつ増やすのなら賛成。

・国債を増やすにしても、歳出の適切な予算配分が行われることが大前提。

です。

皆さまからの異論反論をお待ちしております。


次回は経済でなく人権の分野で何か書きます。

梅田夏希

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