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  • 執筆者の写真梅田夏希

生活保護体験記②~開始編~

 前回の「申請編」では申請までに起こった印象的な出来事などをまとめて書きました。その時提出した生活保護の申請が通りましたので、今回は体験記②を書きます。せっかく稀有な体験をしているのでいずれ書くのに飽きるか受給をやめるまで印象的な出来事などを書き続けようと思います。申請を検討している人はもちろん、行政担当者や政治家、その志望者などにとっても参考になる情報を発信できれば幸いです。



審査の手続き

 

 審査は思ったよりは簡単でした。必要書類を集めて7/11に正式に申請した後は、7/13に窓口に呼び出されて根掘り葉掘り聞かれ、7/14に担当ケースワーカーさんを自宅にお招きして生活状況などを確認して頂きました。審査には2週間と1日を要しましたが、残りの日程はひたすら待つだけでした。そわそわ、そわそわ、そわそわしながら…。


 噂に聞くような横暴な水際対応があるんじゃ…?と内心はビクビクしていましたが、私の場合は全くそんなことはなく。対応は朗らかににこやかに、内容は事務的に、平和な感じで終わりました。一昔前に問題になっていた扶養照会についても、今は基本的に親族に直接連絡されることはなく、それぞれの親族がなぜ援助できないかを申請者が丁寧に説明できれば大丈夫のようです。三親等以内の親族一覧表がいると聞いたので伯父・伯母・甥・姪の名前まで一覧表にして提出しましたが、援助できない理由を聞かれたのは直系尊属と兄弟についてだけでした。



生活保護決定

 

 7/26に電話で保護決定の連絡が入り、さっそく7/27に諸々の手続きに行ってきました。これも1時間はかかりませんでした。我が家の場合、月々の合計扶助費は359,900円下りることになりました。(生活扶助261,120、住宅扶助91,000、教育扶助7,780。)

 計算方法がよく分かりませんが、生活扶助の金額はそのまま「健康で文化的な最低限度の生活」に必要な親子6人分の生活費という意味でしょう。感覚的には、臨時の出費がない月はもっと少なくても余裕で生活できるように思います。家具の故障等が重なると単月でこれを越える月は生じるでしょうから、油断せず財布の紐は引き締めておきたいと思います。

 住宅扶助は我が家のケース(30代夫婦、小学生、幼児3人の計6人、東京23区内在住)の場合の限度額です。今の家賃は約14万円なので限度額91000円を越えた分は下りません。この分は生活費から切りつめて拠出することになるので、引っ越さない限りはギリギリな生活になりそうです。



就労支援相談

 

 今回は1ヶ月あれば仕事を探せるだろうと甘く見た結果、貯金が尽きてしまったわけですが、ひとまず生活費が工面できなくなる危険は過ぎ去ったので落ち着いて就活に集中できそうです。ただ生活費を貰うだけでなく、受給者向けの就業支援を利用することも申請の目的の一つだったので、早速初回の相談を予約しました。


 どうも、先月から私が使っていた民間の転職サイトは、採用1人あたりいくらで契約しているニオイがします。そのため「上場企業の連結決算経験5年以上」「漫画家の編集者経験3年以上」のように絶対にハズレがない採用を行うほかなく、企業は短期の契約であっても、適当に採るぐらいなら採らない選択をするようです。これは採用コストを的確に見積もりたい企業にとっては優れたシステムだと思いますが、私としては採用前に徹底的にマッチング診断されるよりも安月給の試用期間を設けてもらい、あわよくば利益貢献しながら、定着できるかどうかをお互いに探り合う方が遥かに低コストだしマッチング成功率も高いと思うんですが…。そういう求人は一切載っていなかったので、これは使うサイトを変えるしか無さそうです。


 その点、生活保護受給者向けの就労支援なら、支援員はきっと1円でも保護費の支出を減らすべく、私が定着できそうな仕事を真剣に斡旋してくれるのではないかな??あるいは、短期の仕事もあるのではないかな??などと妙に期待しています。数いる応募者の一人として扱われるのでなく、「絶対にこの人が定着できる仕事を斡旋しなきゃ!!」と意気込んでくれると嬉しいものです。そんなことはなく普通にハロワを紹介されるだけかもしれませんけど…。



これ、本当に必要??

 

 さて、生活保護とはご存じの通り、憲法25条に定める「健康で文化的な最低限度の生活」を国民に保障するための中心的な制度であり、社会権の根幹を成す重要な制度であるわけですが、その「最低限度」の基準は憲法によって定められてはおらず、時世に即した水準が法律や政令で定められることとなります。基本的にはお金と医療アクセスさえ確保できれば十分と考えますが、他にも支給されたものがありました。貰う方としては、貰えるものが多いのは単純にありがたいのですが、これはどうなの??と思う印象的な支給物が2つありましたので書き残しておきます。


 1つはみんな大好きNHK受信料です。生活保護受給者になると、どうやらBS料金まで無料になるようです。最低限度の生活に絶対に必要なものとはちょっと思えません。我が家にはテレビを置いていないのでこれを機に置いてみても良いかな?なんて思いましたが、生活保護を受給したことでかえって家の中のものが増えるのは制度の趣旨として全く本末転倒だと思います。


 もう1つは都営交通無料乗車券です。

 世帯に1枚発行されることは、貰う瞬間まで知りませんでした。都営地下鉄、都営バス、都電荒川線、日暮里舎人ライナーが無料になります。私鉄がご厚意で寄付してくれてるなら有難く頂戴できますが、都の税金に還元されるものだと思うと、いかがなものかなぁ…と思います。



代案の提案

 

 さて、文句を言うだけで終わってしまっては生産的とはいえません。実際に受給開始してみて感じた疑問点を元に、改善案も考えてみました。


 まずは住宅扶助ですが、これは現状の限度額を我が家なら91000円のところいっそ40000円程度まで大幅に引き下げてこれを「基準額」などと改称し、基準額を越えた分についても一定割合で支給する仕組みに改めた方がいいと思います。一定割合を例えば半額と設定すれば、

本来の家賃が100000円なら基準額40000円+超過額の半分30000円=70000円の住宅扶助

本来の家賃が160000円なら基準額40000円+超過額の半分60000円=100000円の住宅扶助

を支給して残額は生活扶助を切りつめて負担してもらう仕組みになります。現状の制度のままだと、①限度額いっぱいまでなら不必要に広い家に住んでも受給者にとって全く痛くないことと、②限度額より遥かに高い家賃を負担している場合に最低限度の生活が担保されないこと、が問題だと思います。①は公費の無駄遣いであり、②は制度の趣旨に反しています。この計算方法に改めれば、全体の支給額をほとんど変えることなく①②をまとめて解消できます。


 次にNHK受信料の免除ですが、これは単純に廃止で良いでしょう。社会の情報を収集するのにテレビ、新聞、スマホ、PCなどの中から何を選択するかは、特定企業への忖度なく受給者が任意に選択するべきと考えます。もちろん、一切の情報を収集せずそれらの購入費用も生活費に回すという選択もあっていいと思います。国家ぐるみでテレビ業界を支援するかのような仕組みは不要でしょう。


 次に都営交通については、これも廃止で良いでしょう。配るにしても全線無料券の支給はやりすぎだし、偏っていると思います。貰った方としても、限られた扶助費から交通費を出したくないので、JRや東京メトロを避けてわざわざ遠いルートを通るようになります(私はなりました)。遠くのスーパーなどで安く買い物をするにしても、交通費を足してなお安ければ、無料券がなくても普通に行きます。まして、多摩や島嶼部の人には十分な活用機会すらありません。

 もしかしたら都は福祉事務所に費用請求をしていないのかもしれませんが、表向き計上されていなければタダだ、というものではありません。生活保護受給世帯は全世帯の1.6%もいるので輸送量への影響は無視できず、このために増便されている区間や時間帯があれば、結局は都民の税金で負担されています。

 仮にどうしても継続するにしても、全線乗車券ではなく必要な区間だけの定期券を支給する方法に改めた方が、会計上の支出は増えたとしても、社会全体が負担するべきコストは遥かに安上がりで済むと思います。



おわりに

 

 さて、いろいろありましたが一応は大きなトラブルなく受給生活が始まりました。今後の生活で特に不安なのは、やっぱり就労関連でしょうか。適当に安月給の仕事をすぐ探すか、時間をかけてでも高給かつ定着できそうな仕事を探すか、だいぶ迷っています。初回の就労相談で方針が決まると良いのですが~。

 今後も印象的な出来事があるたびに体験記を書こうと思います。また、これが聞きたい!ということがもしあれば、コメントやtwitterなどでお寄せください。


梅田夏希

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