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  • 執筆者の写真梅田夏希

国債は国の資本金?

 2021年10月31日投開票の衆議院議員選挙に向けた党首討論で「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」(という党名です)の立花党首が「国債は借金というより、企業でいう資本金のようなもの」といった旨の発言をしていたのが印象的でした。なるほどそういう解釈もできるのかと思い、少し考察を深めてみました。

これが党名なのは常識じゃん!と2021年にこれを読んでる人は思うでしょうけど、きっと5年後ぐらいにはすっかり忘れられわけ分からなくなっていると思いますので、予め注記しておきます。笑)

件の発言の直後、立花氏(手前)に対して賛同のサインを送る他党「れいわ新選組」の党首山本氏(手前から2番目)。この点の考えは合うようだ。



貸付と出資の違い

 

 企業に事業資金を提供するとき、その方法は大別して貸付出資があります。一番大きな違いは出したお金が後で返済される返済されないかですが、出資の場合も株式会社であれば株式など、出資者は一定の経済価値を持つ証券または地位を獲得するのが普通です。特に上場企業の株式であれば、容易に売却して現金化することが可能です。

 したがって貸付と出資は、どちらも出したお金は返ってくるけど回収のやり方が異なると解釈するのも可能で、貸付の場合は返済投資の場合は権利の売却によって価値の回収が可能になるわけです。以上はお金を出す方から見た解釈です。



借入を受けることと出資を受けることの違い

 

 次はお金を受け取る方から見た解釈です。借入を受けた場合は、当然ながらいずれ返済する必要があります。返済するお金はその企業が営利活動を通じて稼いだお金が充てられます。約束通り返済するためには、返済時にはその金額に相当する経済価値を企業が保有していなければなりません。

 出資を受けた場合、そのお金(資本金)は紛れもなく自社に募金されたお金であり、返済する必要はありません。任意に返済することもできますが(株式会社なら自己株式の取得→償却)、そんな義務はありませんので普通はしません。



国債の場合は?

 

 少なくとも形式上、国債の発行は紛れもなく政府の借金です。貸付をする方は、決められた期間後に返済されることを明らかに期待しています。お金を出す方から見れば資本金ではなく、明らかに貸付金に当たります。

 ではお金を受け取る方、すなわち政府から見たらどうでしょうか。確かに返済はしますが、そのために営利活動を行いお金を稼ぐ必要がありません。足りなければ貨幣を刷って渡せばいいだけであり、約束通り返済するために、その金額に相当する経済価値を国が保有していなくても構いません。これは実質、返済の義務があってないようなものです。

 なるほど、借入金と資本金のもっとも重要な違いである「返済の義務があるかないか」の一点だけに着目すれば、国債は国の資本金のようなものとも十分言える事が分かりました。



日本国株式会社説

 

 あくまで一つの解釈としてお読みください。

 借入金と出資金を「返済の義務があるかないか」の一点だけで区別し国債を国の資本金と捉えた場合、国債とはすなわち「日本国株式会社の株式」と同義となり、国債の新規発行は「新株発行」になります。従業員3人のベンチャー株式会社が新株を発行しようとすると、買い手を探すのがとてもとても大変で苦労するものですが、優良企業が新株を発行するといくらでも買い手が付きます。国債は、その発行時に買い手がつかないことはまずないので、この点において日本国株式会社は超優良企業と言えそうです。



貨幣は株式である説

 

 あくまで一つの解釈としてお読みください。

 企業の株式とは、つまるところ会社の所有権の切り売りですので、その価値はその企業の業績などに合わせて絶えず変動します。一方の国債はというと満期時に日本円で返済されることが約束されているので、国債の価値は対日本円で大きく変動することはありません。日本国株式会社の業績が変動しても国債の価値があまり変動しないように思えるのは、その価値を測る尺度が日本円だからです。すなわち額面5万円の国債は、現金5万円とほぼ等価です。すると一つの解釈が成り立つと思いませんか。我々が手にしている現金は、日本国株式会社の株券であるという説です。我々は株式を価値の尺度とし、株式で財やサービスを売買していることになります。



株式を保有する意味

 

 我々は企業の株式を保有する時、そこにどんな価値を期待するでしょうか?配当金、株主優待、あるいは株式そのものの価値の向上(による売却益)といったところでしょうか。しかし、その企業を応援したいという気持ちで保有する人もいると思います。上場企業でなくその見込みもない、友人が会社を立ち上げるので応援したくて出資した、といった場合もあると思います。

 日本円や国債を手にするとき、あるいは手放す時にも、その意味について少しだけ想いを馳せてみてください。…いや毎回は面倒か。



おわりに

 

 たかが「返済義務の有無」ひとつに着目したことでここまで思考が広がるとは我ながらびっくりでしたが、国債や貨幣とはそもそも何なのか、に対する一つの解釈が成り立ったのではないでしょうか。「国債は資本金」発言の考察に端を発する今回の貨幣観について、賛同のコメント、はたまた反論する記事など、読んだ方々の反応を楽しみにしています。


梅田夏希

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