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  • 執筆者の写真梅田夏希

中央区議会の懲罰の実態

先週、2020/12/3は東京都中央区議会を傍聴してきました。高橋元気議員のtwitterの投稿が問題であるとして、その懲罰の是非について議論する「懲罰特別委員会」が目当てです。

同じ委員会を傍聴した他の方や、その記事を読んだ方からは表現の自由への挑戦だとか、SNS封じ、はたまたただのいじめだのと散々に言われいますが、私も概ねそういう感想を持ちました。今回の懲罰委員会の開催、その結論としての「戒告」処分の実施に大いに疑問を呈します。その理由を自分なりにまとめたのでブログ記事にします。


高橋元気区議

高橋元気議員(会派:あたらしい中央)

(以下、写真はいずれも中央区議会HPより)







事の次第

 

問題の投稿はこちらです。

問題ツイート単体で読めば、たしかに教育委員への個人攻撃と解釈できなくもない文言です。それでも、この程度の誤解を生んだことを以て懲罰委員会を開き表現の自由を危険に晒すことも、議会の進行を止めて懲罰を話し合うことも私は言語道断だと思いました。


懲罰動議の発議者のお一人いわく、このツイートには問題が3点あるとのことです。

1.前日の本会議で教育委員の任命に賛成したにも関わらず、このツイートは批判的な内容である。この裏腹な態度は票決権を軽んじ、議会の品位を落としている。

2.任命された教育委員の年齢のみを理由として批判している。個人攻撃であり、高齢者差別でもある。

3.教育委員任命の賛否について、事前に検討する時間はあったはずなのに、事後に批判ツイートをしている。


小坂和輝議員(会派:あたらしい中央)







これに対して高橋元気議員本人と、同会派の小坂和輝議員のお二人は概ね以下のように反論していました。

1.ツイートで批判したのは教育委員任命に関する制度に対してであり、任命そのものに反対だったわけではない。従って票決を軽んじてはいない。

2.年齢を理由とする批判は一般論として述べたものであり、教育委員への個人攻撃ではない。高齢者差別にもあたらない。

3.教育委員任命の賛否について事前に検討する機会である会派会議の内容は、守秘義務を負っているため回答しない。


私は、この反論は概ね筋が通っていると思います。また、懲罰に反対する共産党の委員は、議会での賛否と異なった発言があったとしても、議会の品位を傷つけたとは言えないと意見を表明しました。私はこれもその通りだと思います。議会での票決と個人の発言が異なる場面などいくらでも思いつきます。党議拘束に従って賛否を投じた、概ね賛成だが反対する部分もあった、決議後も勉強を重ねて意見が変わった、などでしょうか。どの場合において票決権を軽んじた、議会の品位を汚したと言えるのか、なぜそう言えるのか、大いに疑問です。

更に引っかかったのが、両議員のこの反論に対して、発議者側の再反論がほとんどなかったことです。例えば、教育委員任命に関する制度に対する批判をしたのは悪いことだ、今回任命された教育委員本人が遺憾の意を示されたのだ、などという主張がなされ、理由や根拠が示されたのなら納得できたかもしれません。しかし、明確な質問部分に回答する以外はほとんど議論は噛み合うことなく、お互いの主張が順番に述べられただけでした。


結局、懲罰特別委員会では小坂和輝議員や高橋元気議員の発言内容が汲み取られることはなく、正面から否定されることもないまま、多数決によって高橋元気議員の「戒告」処分が決定されました。更に、戒告文には小坂和輝議員や高橋元気議員が否認したはずの容疑が消されることなく、そのまま載せられました。



言論の自由との兼ね合い

 

憲法第二十一条

1、集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

2、検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。


言論の自由は(かなーーーりざっくり言うと)

A.都合の悪い意見や表現を誰かが表明しようとしたとき、これを公開できないように封殺してはならない。

B.公開された意見や表現に対して反論したり、批判することはできる。

という性質を持っています。


今回の懲罰動議について、懲罰に課すことそのものは言論の封殺ではなく批判ですので、懲罰動議そのものが問題行動であるとは思いません。しかし、懲罰理由や戒告文の中には今後の高橋元気議員のtwitterの利用を制限しかねない内容を含んでいますので、今後は封殺する気があると捉えられなくもない内容です。私は、今回の懲罰動議はかなり軽率で、このように表現の自由を制約しかねない懲罰についてはもっともっと、かなり慎重にやるべきだったと思います。まして、中央区議会の懲罰動議は当該問題行動(今回は高橋議員のツイート)から3日以内に提出しなければならないとされています。(今回、5日経って提出されていることも問題とされていますが、ここでは掘り下げません。)熟慮期間が与えられていない懲罰動議という方法を取ったのは失敗だったと言えるでしょう。



激しくブーメラン?

 

墨谷浩一議員(代表発議者、会派:公明党)





礒野忠議員(発議者、会派:自民党)




渡部恵子議員(発議者、会派:新風会)




渡部博年議員(発議者、会派:区民の風)







今回懲罰動議を出した4議員やそれに賛成したと思われる他議員の行動はあまりに稚拙であったと思います。動議で4議員は、高橋元気議員が当該ツイートによって議会の品位を穢し、個人攻撃をし、高齢者差別をしたと主張されていました。にもかかわらず、議会内において発議者側の議員たちの発言は大いに品位を欠いていたと感じました。


発議者のうちの一人は、「会派の先輩が新人議員を育てる責任がある」と小坂和輝議員を諭しました。そのうえ、高橋元気議員の弁明を考慮せず、新人議員より先輩議員の方が格上であるという前提に基づいた差別的な発言によって、自らが思う議員らしさを押し付ける有様でした。内容もそうですが、ひどく上から目線で「品位」を欠いた態度だと感じました。

他の発議者および発議者側の議員も、この方ほど露骨ではないものの結論ありきの話し方が目立ち、みっともなかったと思います。



結局賛成した議員、反対した議員

 

懲罰特別委員会では17:50頃、賛成5、反対2で戒告の懲罰となり、

その決定が直後の本会議で19:50頃、賛成23、反対5で支持され、処分が決定しました。

議論の内容で負けたならともかく、単に数の力で押し切られた形となり、残念です。


個人的に注目なのが、一人会派の維新の会と未来会議のお二人も賛成したことです。お二人の熟慮の末の票決であれば何も文句はありませんが、もしも区議会の慣習、あるいは先輩議員たちの思い描く議員らしさに飲まれてしまってるとしたら、それこそ票決権の軽視であり、残念です。そうでないことを祈ります。


白須夏議員(会派:維新の会)





二瓶文徳議員(会派:未来会議)








かなり疑問の残る議会運営

 

結局、懲罰特別委員会は少数意見を無視して黙殺する場として機能していました。懲罰を受ける側の弁明は取り入れず数の力で結論を決めただけだということが、傍聴してみてよく分かりました。これは本会議を5時間も中断して多くの職員を残業させてまで(残業代はもちろん税金)やる価値はなかったと言い切っていいでしょう。


この懲罰特別委員会は傍聴席がわずか12席のうえ録画されておらず、議事録が公開されるのも決して早くはない、透明性の低いものです。


私は、今回の軽率な懲罰動議と中身のない懲罰委員会を見てしまったことにより、議会というのは大変信用のならない仕組みであると感じました。言い換えれば、今回の動議と委員会が開かれてしまったことにより中央区議会の信頼と品位は(少なくとも私の中では)失墜したと言えます。


今後はもっと開かれた議会で、最低限の中身のある議論がなされることを望みます。



梅田夏希


(記事は個人の感想です。現場に居合わせたとはいえ、全ての事実を正確に把握しているとは限りません。あとから認識を改め、記事を改変する可能性があります。)

(この記事における賞賛あるいは批判は、今回の懲罰委員会の中での言動に対してであり、その人物の人格全てを全肯定、全否定する意図はありません。)

(なんていう注記は普段から人と会話し、またはネットに触れてる人には不要と思いますが…。中央区議会は議員や区長のすべてのツイートにこのような注記を奨励するのでしょうか。)

(しかし、発議者の一人は「読み手に誤解を与えたら取り消せない」と明言しました。よって、戒告処分を避けるためにこれらの注記をここに書きます。ネット以前に、言語の何たるかをウィトゲンシュタイン先生と一緒に説教してやりたい。)


おしまい。

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