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  • 執筆者の写真梅田夏希

投票に行かなかった5つの理由


継続的な投票率の低下が嘆かれています。私は過去に11年間、様々な理由を付けて選挙に行かなかった時期がありました。その理由は「面倒だから」などのいい加減なものではなく、投票を拒否するに足る確固たる信念を持っていたと自負しています。今回は、私が投票に行かなかった理由についてつらつらと語ります。


投票に行く理由を探している方や、投票率を上げる活動をされている方の参考になる内容だと思います。



行かなかった11年間、行っている3年間

 

私は多くの皆さんと同様、運よく普通選挙制度のある国で生まれ、運よくその国の国籍を持つ条件を満たしており、20歳で選挙権を獲得しました。私が選挙に行かなかったのはそれから31歳までの約11年間です。初めて行ったのが31歳のときで、それから34歳(現在)に至るまでの約3年間は毎回欠かさず行っています。その都度行く理由を見つけているので行っていますが、もしかしたら、また行かなくなるかもしれません。以下に、行かなかった11年間に考えていたことを5つ書き記します。



行かなかった理由1.そもそも行く理由がないから

 

サッカー観戦に興味がない人や、視聴率60%のテレビ番組を見ない人に対して「なんで見ないの?」なんて普通は聞きません。見る理由がないからに決まっています。見る見ないを検討すらしていないのだから、見ない理由なんて存在しません。

選挙も同じです。投票に行かない人の中には、そもそも興味がなく、行く行かないを検討すらしていない人がたくさんいます。投票率を上げる活動をする人たちは行かない人たちの「行かない理由」を探しがちですが、検討すらしていない場合「行かない理由」は存在しません。直接「行かない理由」をインタビューしたところで、この人たちは「仕事が忙しいから」「天気が悪かった」「投票所が遠い」「投票したい人がいない」などの苦しい言い訳を並べるだけに終わります。しかし本音は、興味がないから、または、優先順位が低いからに他なりません。投票所を増やしたところで、言い訳の内容が変わるだけでしょう。興味のない人にとって選挙は、超人気テレビ番組のようなものです。

この人たちに投票に行ってもらうためには、選挙に行くのかどうか、そもそも検討してもらうところから始めなければなりません。

私の場合は行かない11年間のうちの中間にあたる22歳から28歳ぐらいまでの時期がこれに該当し、行くかどうかの検討すらしませんでした。



行かなかった理由2.誰が当選しても大差ないから

 

これもまた真実です。全く同じでないことは分かっています。しかし、政権交代や憲法改正のような比較的大きな政治イベントでさえ、普通の市民の身に起こるライフイベントと比べてしまえば、取るに足らないぐらい小さな出来事に過ぎません。すなわち、転職する、進学する、引っ越す、彼氏彼女ができる、病気になる、病気が治る、結婚する、子供ができる、離婚する…などなど、これらのライフイベントに拠る生活への影響の方が、政権交代なんかより遥かに大きいのが普通です。それどころか、仕事でミスをする、仲のいい同僚が辞める、子供が怪我をする、電車が大幅に遅れる、パソコンが壊れる、携帯を失くす、財布を落とす…などなど、ライフイベントとまで言えない印象的な出来事でさえも、大抵、生活への影響は政権交代を上回ります。

この人たちに投票に行ってもらうためには、今回の選挙の結果、どんな大きな変化が起こるのかを認識してもらう必要があります。「行かないと消費税が2%上がるよ!」程度では動きません。

私の場合、正直、これは今も思っています。どの議員さんも社会全体を少しずつ変えていく仕事に尽力されており、感謝していますが、政治が私自身の生活を大きく変えたことはありません。私が現在選挙に行っているのは社会を少しだけ良くするためであり、自分の生活を良くするためではありません。



行かなかった理由3.よく知らないから

 

大抵の人は、知らないアニメの人気キャラ投票に投票しません。大ファンが投じる1票も適当に投じられる1票も同じ価値を持っているのなら、ファンの人だけが投票した方が妥当な結果が出るに決まっています。それを「第1話だけ見てくれ。そして良いと思ったキャラに投票してくれ」なんて言われても、投票する気にはなりません。「〇〇に投票してくれ」と言われれば、頼んだ人の期待に応えて、その回だけは言われた通りに投票するかもしれません。しかし、それはそのアニメ全体を盛り上げるためではなく、頼んできた人の期待に応えるための投票行動に過ぎません。同様に考えると、政治のことをよく知らないし興味もないという人たちが選挙に行かないのは納得できます。大事な1票を投じるからこそ、無責任な行使はしたくないと考えるわけです。

この人たちに現実の選挙に行ってもらうためには、知らないなりに投票してもいいと分かってもらう必要があります。政治や選挙、政党、候補者のことを知ってもらうアプローチも考えられますが、それは大変すぎます。

私は20歳から28歳ぐらいまで、よく知らないから行きたくないと思っていました。昔、法学部でいろいろなことを学んでいましたが、政治も他のあらゆる学問と同じで、知れば知るほど分からない部分が増えていきました。28歳ぐらいでようやく各政党の歴史が(たかが8年分とはいえ)分かり、政策の傾向なども分かったので、間違った判断をするかもしれないけど1票ぐらい入れてもいいかと思えるようになりました。



行かなかった理由4.経済合理性がないから

 

政治に詳しい人ほど目を逸らしがちだと思いますが、たった1票によって選挙の結果が変わることは基本的にありません。統一地方選挙(4年に1回、全国の多くの自治体で一斉にその町の選挙が行われる)においても、1票差で当落が分かれたり、同数得票によるクジ引きをしたりが毎回100例も1000例もあるわけではありません。まして自分がその当落線上の人にピンポイントに投票する確率なんてたかが知れています。投票に行かない人の中には、このように自分の1票の価値を正確に理解しているリアリストが多数いると感じます。彼らは、どうせその回の選挙の結果に影響がないのなら、投票日にも普段通りに労働でもしていた方が社会貢献になると考えます。

この人たちに投票に行ってもらうためには、1票の価値をより高めに見積もってもらう必要があります。「1票の力は小さいけど、みんなの力を合わせれば~」では動きません。



行かなかった理由5.それでも投票権は保障されているから

 

生活保護を受けたことがない人でもその存在を意識して安心して暮らせるのと同じで、選挙に行ったことのない人でも最悪の場合には投票に行ける安心感を持っています。そもそも民主主義は最良を選ぶための仕組みではなく、最悪を防ぐための仕組みです。この最も重要な機能を守るためだけならば、必要なのは投票の「権利」が保障されていることであって、あたかも「義務」であるかのようにみんなが毎回投票に行く必要はありません。

最悪の政治家が現れたとします。その人は戦争を起こす気満々で、おまけに麻薬を大量に輸入して国内に流通させて儲けようとしています。そのような人が力を持ったときこそ選挙の出番であり、一般民衆みんなが力を合わせて投票に行くことで、その人の当選を防ぐことができます。世襲制だとこう簡単には防げません。民主主義のこの機能を理解している人なら、平時には投票に行かなくても、いずれ最悪の事態が訪れたときには必ず選挙に行きます。

この人たちに投票に行ってもらうためには、今回の選挙の結果、最悪かそれに近い事態が起こる可能性があると思ってもらう必要があります。「行かないと消費税が2%上がるよ!」程度では動きません。



結果、私は行かなかった

 

これら5つの理由から、私は3年前まで投票に行きませんでした。行かなかった11年間の間に何度も選挙に行くように言われ、その度になぜ行った方がいいのかを尋ねましたが、これらの理由を十分に解消できる答えはなかなか得られませんでしたので、かえってこの人たち盲目的だな…宗教的だな…怖いな…行きたくないな…と思っていました。次回は、そんな私がなぜ投票に行くようになったのかと、投票率を上げたい人はどんな活動をすればいいのかの提案を書きます。

続けて書こうと思ったのですが、長くなったので今日はここまでにします。


梅田夏希



画像引用元Pixabay

3枚目ijmaki

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